ルフェッセンス考
前にもどこかに書いたような気がしますが、オークションなどでルフェッセンスの名前を見かけるようになりましたので。学名と園芸品種名(選抜系統とか選抜個体とか)が混同して扱われるのが園芸界の悪習です。
ルフェッセンスはConophytum rufescensのカタカナ表記という前提で・・・
Conophytum rufescensは、もともとはN.E.Brownが南ア・Pofadderの付近で発見した種に1930年に命名したものです。学名をつける時には必ずタイプ標本を作りますから、厳密に言えばその個体そのものに与えられた名前ということになります。そして、そのタイプ標本をその付近に自生している良く似た個体群の代表として扱い、個体群全てをその種名(C. rufescens)と呼ぶわけです。なので、手持ちの由来不明の個体が単に赤いからといってルフェッセンスと呼ぶことは出来ません。またC. rufescensは学名であって、選抜個体名や選抜品種名でもないわけです。学名で呼ぶには、最初に発見された個体群に由来することがハッキリしていることが必須なのです。
推測ですが、かつて日本に導入されたものはPofadder付近で採取された個体に由来するものだったと思います。原産地球が当たり前だった時代がありました。しかし、その後は日本国内で実生が繰り返されて、他のマウガニーとの交配などもおこって、遺伝的に純粋なPofadder付近産のものとは言い切れなくなっているのではないでしょうかね。それらは実生すれば緑色のものを分離してくることもあるし、他の産地の赤色個体との交配であれば、実生はほぼ全て赤になるでしょう。後者のような場合があるので、赤いからといって、C. rufescensと呼んでよいわけではないのです。
その後、自生地の調査が進んで、マウガニーの類は広範囲に分布する種であることがわかり、その中には赤くなるものも多く、Pofadder付近産のものだけを特別扱いして独立した種(C. rufescens)とする必要がなくなったため、C. maughanii ssp. maughaniiとして統合されて今に至ります。
しかし、例えばやはり遺伝子鑑定でC. rufescensとC. maughaniiとが明確に見分けることが出来る・・・ということが将来起これば、再びC. rufescensの学名が復活することになるでしょう。その時、どの個体をC. rufescensと呼ぶかというと、やはり由来がハッキリしていることが条件になるので、単に赤いからといってC. rufescensと呼ぶわけにはいかないのです。学名の付与(種の同定)は厳格です。
由来が明確でない赤い選抜個体を園芸的に'ルフェッセンス'(あえてシングルコーテーションで囲ったカタカナで書くのは、これは学名ではなく園芸品種名であるという意味です)と呼ぶのは業者さんの都合で構わないと思います。それを趣味家が喜ぶかということでしょう。憶測ですが、Pofadder以外の産地のマウガニーでもけっこう赤くなるものがあり、それをネームバリューのある'ルフェッセンス'として高く売ろうとする人も当然いると思います。
コノフィツムの分類や名称について厳格に考えている生産者も販売者も残念ながら国内にはいないというのが最大の問題でしょう。だいぶ前ですが、「これが正真正銘・純粋なピランシーです!」と言って、'翠星'を売っている業者さんがいました。あまりのことに質問してみると、仕入先の生産者がそう言っているんだから正しいに決っていると返答されました。その程度です。
また修正するかもしれません・・・。